近年、多くの企業がワークスペースのレイアウトの重要性に注目しているが、実際ワークスペースのレイアウトデザインによる心理学的な影響とは何なのか。

単に1平方フィート当たりのコストだけなのか、それとも他に考慮しなければならない付加価値的なポイントがあるのか。研究によると、オフィスのレイアウトが適切にデザインされると、創造性、またはチームワークなどに影響を与える可能性が大きいかもしれないという興味深い研究が発表された。

2018年に開催された人材資本研究所(HCI)戦略的ワークフォースアナリストカンファレンスで、マサチューセッツ工科大学のベン・ウェーバー博士はワークスペースでコラボレーションがどのように発生するのかという研究発表を行なった。

ウェーバー博士は、先ず最初に事実上コラボレーションや関係などが特にない2つの大きなグループの従業員のレイアウトの図を示し、このグループを隔てる境界線はどこに引けるかと参加者に尋ねた。参加者からは、スーパーバイザーとスタッフの間に境界線が引ける、いや各部署、チームの間で、キュービクル(個人ブースのパーテーション)間で境界線が引ける、などと様々な意見が出た。

しかし、その答えは実際はるかにシンプルなものだった。2つのグループはそれぞれビルの違ったフロアにあった為、実際にはほとんどコミニケーションがなかったのである。このビルは高層ではなくわずか2階建だったにもかかわらず、それぞれのグループはグループ間同士でのコミニケーション方法が定型化されていたため、普通に会話をするとき、他のグループがその会話に入ることはなかったのだ。

コラボレーションを増やすために、従業員のデスクを数ヶ月ごとに再配置しなおす実験が行われた。その結果、既存の繋がりは断絶せずに、逆に各グループ間での壁がなくなり、更には各従業員間で個人的・複合的な繋がりが芽生えたという事が確認できたのだ。このウェーバー博士の研究から、座る場所、また誰の近くに座るのか、ということが組織の創造性やコラボレーションに大きな影響を与えるという非常に興味深い結果だった。

3タイプのレイアウトのスタイルのそれぞれの利点(また欠点)が以下に示されている。 ここで重要なことは最良の結果を得るための適切なバランスを見つけだすことである。

エルゴノミクス(人間工学)とワークスペースデザイン

長年の間、部署ごと、また個人ブースパーテーション型のレイアウトはオフィスの一般的なレイアウトだった。通常は経営者は予算や広さなどからレイアウトを決定していた。実際これには複数の利点と欠点が混在している。エルゴノミクスを採用したレイアウトでは、各従業員はプライバシーが守られ、ゆっくりと考え事が出来るが、コラボレーションするチャンスは限られてしまうかもしれない。キュービクル(個人ブースパーテンション)タイプは十分な柔軟性を提供し、平方フィート当たりのコストを大幅に削減するが、労働者のプライバシーを侵害する可能性がある。現在は他のスタイルを融合させたレイアウトがトレンドとなってきているようだ。例えば、オープンスペース、デスククラスターパーテーション、座り心地の良いオフィスチェアーなど、またイノベーティブラボ型ワークスペースなどの要素が最近のオフィスデザインには取り込まれてきている。この理由は非常に明確だ。それは、経営者が従業員間でのコラボレーションのチャンスを増やして創造的な環境を提供できる方法を模索しているからなのだ。

オープンオフィススペースタイプ

ハーバードが提唱した全く仕切りがないオープンワークスペースを確保したこのオープンオフィスコンセプトは、実際には期待されていたほどのチームワークやコラボレーションに効果がなかったとも言われているが、もしこのオープンスペースを以前には存在していなかった「各従業員やチーム間の関係を築く」というコンセプトを目標とするならば、これが達成できる可能性が大きくなる。さらにこのオープンスペースだけではなく、従業員のチームまたは各個人がプライベートな空間が必要な時にそれに応じて利用できるスペースが併設されていれば最高のレイアウトになるはずだ。重要なことはそのバランスということになる。

デスククラスタータイプ

デスククラスター型のレイアウトは1平方フィートあたりに対し多くの従業員数を収容することが可能だ。拡大し続けている企業では従業員が常に増加し続けることになり、オフィスの限られたスペース内でのレイアウト調整に常に苦労をしていることは想像が容易である。ただし、このレイアウトの欠点はプライバシー、集中力にネガティブに影響する可能性があるということである。重要なポイントは、オフィススペースをこの個人専用のデスククラスター型スペースと、従業員がプライベートな会話やミーティングなどをしたいときに利用することができる共有ワークスペースにバランス良く振り分けることである。

イノベーティブラボワークスペースタイプ

ここ数年間で多くのコワーキングスペースが登場し、他企業の従業員同士が並んで座ることができるようになってきている。通常は対話をしない人同士が交流を始めたとき、イノベーションが始まる可能性が高い。最初に話したウェーバー博士のワークスペースのレイアウトの心理学実験の結果を思い出してみよう。というのは、もし企業組織が通常対話しない人同士の交流を活発化させることができる方法を発見できれば、その後物理的な距離が離れたとしても強力な繋がりを作り出すことができるからだ。

最適なバランスを見つける

雇用主は従業員たちを同じ部屋に連れていき、何か素晴らしいことが起こるのかとただ期待しているだけではない。オフィスのレイアウトを検討するときには各従業員のニーズに対応した方法を考慮することが重要となる。また大局的に見て検討することも必要であろう。エルゴノミクスやワークスペースのレイアウトを活用することによってコラボレーション、ブレインストーミングや創造性を高めていくことが可能であるという事を認識し、企業はこの効果を活用することにより良い成果を上げるべきと考えられる。

コメントを残す